黒柴「桃」     その伍。

             −アウル−

 先客のいたドッグラン。
M・ダックスやフレンチブルが楽しく追いかけっこをしている中に桃も参加させていただきました。
 最初はめっちゃ仲良く遊んでいたのですが、足の遅いフレンチブルに突然桃が切れました。
 「ガルルル」「キャン、キャン」運よく大事には至りませんでしたが、もう二度と遊んではもらえません。
 他の日には大型犬のも襲い掛かりました。
襲い掛かって逆襲を受けて負けてくれれば桃もそれなりに反省もするのでしょうが、豆柴サイズなのにめちゃくちゃ強いので始末に置けません。
 いったい何が原因なのかわからないまま何ヶ月か経ってネットで偶然「アウル」の名前を見つけて、早速出掛けてみました。
 ここは今は営業されていませんが、ご夫婦で営んでおられるドッグランでした。
自分たちの飼い犬のためのドッグランを解放されて迷い犬も保護されているそんなところでした。
 その奥さんが、桃を見て「この仔怖がっていますね。ほら、こんなに背中の毛が逆立っていますよ。」
 「怖がっている。」凶暴で攻撃的な桃が……思ってもいなかった一言でした。
 それに背中の毛が逆立っている事さえ気づいていなかったのです。
初めて桃の本当の気持ちを聞いた気がしました。

                      つづく