乳がん患者を見守る家族の立場。その四。

 手術室の隣の小さな小部屋に案内された私の目の前には小さなテーブルがひとつ、「これを見てください」と言われてそちらに向かうと後ろから私に近づく二人の看護師の気配それを気にしながらテーブルの上を見ると、そこにはさっきまで奥さんの体の一部だったものが、トレイの上に置かれていた。
 主治医が淡々と病変についての説明を始めた。
後ろで二人の看護師が距離を置いて下がっていくのがわかる。
どうやらこの状況で気分が悪くなって立っていられなくなる家族がいるようで、看護師は私が倒れたときのためについていてくれたようだった。

 それならそれで見せる前に事前に説明するとか予告するとかすればいいのに突然見せられたらびっくりするでしょう。

 でも「検査にまわさなければ断言は出来ませんが、腫瘍は全部取れましたし一緒に摘出したリンパにも転移はありませんので安心ですよ」との言葉でちょっとほっとして病室に戻り奥さんが麻酔からさめるのを待っていた。

                      つづく