乳がん患者を見守る家族の立場。その六。

          −旅行に行こうぜ−
 順調に回復している奥さんでしたが、やはり再発や転移の不安はぬぐえません。一人で落ち込んだり、不安を口にすることも時々あります。

 「今のうちに、再発や転移の無い元気な今のうちに思い出作りに旅行に行こうぜ。」そんな私の言葉に「そんなこと今考えられへんし、きっと無理やわ。」と消極的な奥さん。

 そんな言葉は気にも留めずに私は旅行の計画を立て始めました。
旅行の条件は、①奥さんの手術の傷のために貸切風呂または部屋風呂があること。②飛鳥も参加(この時、桃はまだ我が家の仔ではありませんでした)③犬も泊まれる宿④飛鳥が参加なので当然交通手段はマイカー⑤私も楽しむ

以上の条件で本とインターネットとにらめっこしながら資料を集めました。

するとそれまで旅行に乗り気ではなかった奥さんが資料に目を落として、「ここはイマイチやね、こっちはいくらぐらいするの?」と興味をしめしだしました。「そこはちょっと高いねん。」「ちょっとぐらい高くてもおいしいご飯食べたいわ。」「飛鳥のご飯は?」「道わかるの?」「カーナビ買うし」「旅行用の鞄は?」「いつ行くの?」…。

 いつの間にかガンの話はどっかに行っちゃいました。
無事に旅行に行ってお土産いっぱい買って、うちに帰ってしばらくしたら、奥さんが「来年はどうするの?」

 ハイハイ元気なら何度でも行きますよ。

                     つづく