乳がん患者を見守る家族の立場。その伍。

 手術も無事に終わり、退院の日には飛鳥と一緒にお迎えです。

 家に帰ってしばらくすると、やっぱり抜けました。
そう髪の毛です。朝起きるとまくらにべったりと…話には聞いていましたがやっぱり抜けるのですね。

 心の準備もかつらの準備もばっちりなので別にあわてることも無く、普通に対応していましたが、風呂場と枕は髪の毛だらけ。

 「いっそ全部抜いちゃえば」との私の言葉に「あほやな。残ってる毛のおかげでかつらがズレへんのやで。」…なるほど知らなかった。

 傷も癒えて仕事にも復帰してある日、仕事から帰った奥さんが私に「あんな、今日な仕事場の今まで一言も口を利いたことの無いいけずそうなおばさんがわたしの所に来てな『あんた、乳がんやってんてな。わたしもや負けたらあかんよ。がんばりや。なんかあったらわたしに言いや。』って言いにきはってん。」とうれしそうに報告。

 やっぱり私なんかが励ますより同性・同病の人に励まされるのが一番。
私と飛鳥が出来るのはこれくらい。

                     つづく